地元人に定番と呼ばれるそば茶屋。vol.5

そばつゆの魔法。


左上、右:鹿児島産の薄口醤油をベースに、枕崎産かつおで仕込んだ、そばつゆ。宮崎県西米良村産のゆずで、辛みを微妙に調整したゆず胡椒。白ネギの〝きざみねぎ〟は切り方と流水で甘みを増す。
左下:〆には黒豚のうま味が溶け出した鍋に、そばを入れてさっぱりと。


新しい定番

鹿児島といえば黒。

黒といえば「黒豚」が思い浮かぶのではなかろうか。

鹿児島と黒豚の縁は深く、なんと400年も前から島津のお殿様に珍重され、

やがて全国各地の大名からも欲しがられたという。

その黒豚のおいしさを引き出す、現代の食べ方が「黒豚しゃぶ」だ。

黒豚の脂身は良質で、しゃぶしゃぶにすると余分な脂分が抜け、うま味が凝縮されるのだ。


そば茶屋は、ここでも新しい定番を生み出した。

それが「そばつゆで食べる」黒豚しゃぶだ。

自慢のそばつゆに、ゆず胡椒、白ねぎの3点セットで食べる。「純粋六白黒豚」のバラ肉は、トロけるような赤身と旨みのある白身が特長。やがて舌の肥えた東京人に通じて、大ブレイクした。


意外な発想

その開発の様子を知る堂下専務はこう語る。

「東京に出店する新しい店で、鹿児島の食材を、よりおいしく、

より新しい味わい方で出そうということになったんです。

自分たちらしい、これまでにない食べ方を提案したいと試行錯誤しました」。

ある日、それまでポン酢かゴマだれで食べていた黒豚しゃぶを、

普段作っているそばつゆで食べてみた。

すると、どうだろう。

黒豚本来の繊細な香りとうま味が感じられて、驚くほどほどおいしかったという。

「そばつゆに合う肉の厚さも研究しました。何頭の黒豚を食べたことか」。

こうして、元がそば屋だからこそできた、黒豚の新しい食べ方が誕生した。


「そばつゆ仕立ての黒豚しゃぶ」と命名された、その新しい味覚を携えて

東京有楽町に「遊食豚彩 いち、にい、さん」一号店を開設。

店名は鹿児島と東京を結ぶ国道1号、2号、3号をひた走り、

鹿児島の食を届けたいとの思いからだという。


鹿児島生まれ東京育ち

花の東京でデビューした「そばつゆ仕立ての黒豚しゃぶ」。

その後、いち、にい、さん、と、トントン拍子に人気を呼んだか思えば、そうではない。

「はじめは、さっぱりウケませんでした」と堂下さんは苦笑する。

「開店当初、お客さんの食べ慣れたポン酢やゴマだれといっしょに出していたのですが、

なかなかそばつゆで食べてもらえない。

ならばと、思いきってこの2つを引っ込めて、そばつゆだけにしたのです」。

やがて舌の肥えた東京人に通じたのか、ある時期から大ブレイクした。

いまでは、全国各地で、「黒豚はそばつゆで食べる」があたりまえになってきたのだ。


意外なおいしさが定番に変わっていく、その物語を味わえるのも楽しい。

札幌、仙台、東京、名古屋、福岡、鹿児島、沖縄と、出店した都市を結び、鹿児島の「黒豚しゃぶ」が北へ、南へと日本縦断する「日本列島豚しゃぶライン」を作り上げる夢を描いている。

遊食豚彩

いちにいさん本店

鹿児島市下荒田1-21-24

人気の黒豚しゃぶのほか、鹿児島を代表する食材を使った多彩な料理を楽しめる。

<鹿児島県内の店舗>

・アミュプラザ店(鹿児島中央駅隣接アミュプラザ5F)

・天文館店(天神ぴらもーるアーケード内)

・国分店(霧島市国分野口西540-3)

ミナミノクニ/地元人が見つけた面白い鹿児島

鹿児島で発行されている観光情報誌の編集スタッフがお届けする鹿児島のウェブマガジン。

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