おいしさの舞台裏。
あたりまえのことを
極めること
そば茶屋のスピリット
伝統的な薩摩そばは、つなぎに山芋を加え打つのが常道だ。
そば茶屋で楽しめるそばも、その伝統を受け継いでいる。
この山芋を入れたそばは口当たりが良い。
赤ちゃんの唇のような快いなめらかさがあり、
くいっと歯に食い込む感触が楽しい。
噛むとほのかな甘みがでてくる。
そしてまた喉越しがいい。
そばつゆも、東京や信州とは違った鹿児島独特のつゆ。
かつおの出汁が効いた力強く、ほの甘い味付けだ。
この、そば茶屋の味を長年見守ってきたのが、
そば茶屋を運営する(株)フェニックスの堂下俊文専務だ。
「1日にどれだけたくさん作ろうと、
お客様が出会うのは1杯です。
いつでもベストのものを作りたい」と堂下専務。
大事にしているのは、昔ながらの知恵を忘れないこと。
そして、日々あたりまえのことを、あたりまえにやること。
「たとえば、かつおと水、醤油、みりんだけでつゆのおいしさを追求します。
添加物は一切使いません。それが日本人の知恵だから」。
あたりまえのことを極めるー凡事徹底。
それが、そば茶屋のスピリットだと教わるようだ。
飲食業は「水」が命。鹿児島産のかつお節やしいたけなどで丁寧にとる出汁にも地下天然水を使う。地域によって店舗でも井戸を掘って汲み上げた地下天然水を使用する。
左:そば茶屋は毎朝、その日に使う分だけ工場で打ち、県内すべての店舗で「挽き立て、作り立て」のそばを実現する。
右:鹿児島の醤油とみりんを調合し熟成させた「本返し」は、うまみがあり、まろやかなもの。これに出汁を合わせると「そばつゆ」ができあがる。
はじめてのそば打ち体験
薩摩の小京都とも称される知覧武家屋敷群。
その入口に「そば道楽手打ちそば道場 三稜館」がある。
鹿児島のそば文化を広げたいと、
そば茶屋が20年ほど前に建てた手打ちそばの道場だ。
迎えてくれたのは館長の小正隼人さんと、副館長の緒方政信さん。
奥へ案内されるとそこでは、大きな石臼が二台並び、そばの実を粉にしていた。
「石臼挽きは熱を持ちにくいため、風味が飛びにくいのです」と小正さん。
大量にそばを作っても風味があるのは、
そばの実の甘皮を残した「挽きぐるみ」を使うからだそう。
キャリア20年のそば打ち職人・緒方さんが実演をしてくれた。
水回しの水の振り方、指先での合わせ方、そばを切る包丁の入れ方など、
その扱い方一つ一つを語りながら打つ。
その丁寧な所作に、そばを慈しむ心が伝わってくるようだ。
「そばは断面が正方形に近い方が喉越しがよく、うまいんです」。
その細く均等に切られたそばの美しさに見惚れてしまった。
右下:はじめてのそば打ち。やってみるとこれがなかなか楽しい。小麦2にそば粉8の二八蕎麦に山芋を加えるのが三稜館の薩摩そば。
右上:2台の大きな石臼。そばの実に熱が伝わって香りが逃げないように、一分間に20回転ほどのペースでゆっくりと回る。
左:そば打ちは大きく4つの工程。そば粉に水を均等にいき渡らせる「水回し」、空気を出しながら「こねる」。そばの厚みが均等になるように「のし」、蕎麦の細さを均等に「切る」。どの工程も「均等に」がキーワード。
手打ちそば体験はこちらでできます。
詳細はお問い合わせください。
そば茶屋 吹上庵
手打ちそば道場「三稜館」
南九州市知覧町郡13714
☎0993-83-1555
0コメント