鹿児島の旅特集「桜島に魅せられて」その3

自分の中に抱えるモヤモヤが 

一瞬のうちに吹き飛ばされて。


● さめしまことえ さん 美術作家


 「桜島って、そうなんだ」「そうそう、桜島ってこうなんだよ」と、地元を静かに熱狂させている一冊がある。この春刊行された『桜島! まるごと絵本』だ。県内の書店では長く売れ筋ランキングの上位に。離れて暮らす子や孫たちに贈るために、2冊、3冊と買っていく人もいるらしい。わずか数十ページのこの絵本が、なぜこれほどまでに鹿児島人の心をとらえるのだろう。  この絵本の作者は、さめしまことえさん。アートと地域をつなぐ活動に関わり、かつて都会から桜島に数年間移住した経験があるという。「経済優先社会への疑問、迷い―そんな自分の中に抱えるモヤモヤを、桜島という土地や人が一瞬で吹き飛ばしてくれました」。『桜島!まるごと絵本』はそんな体験もベースになって描かれた。  さて、その絵本。ページをめくれば、噴煙巻き上がる大爆発のシーンにハッとさせられ、桜島大根の収穫を喜ぶ人々の笑顔にホッとする。しみじみ温かい絵とストーリーにこころを解きほぐされて、気がつけば自分の中にある桜島の、ふるさとの輪郭をなぞっていた。火山とともにあり続ける厳しくも豊かな暮らし、力強く温かい人々―そこに描かれるのは、桜島の美しさや脅威だけではなく、まさに桜島「まるごと」だ。  桜島の魅力を、子どもたちにもやさしく伝える、ありそうでなかった絵本。ぜひ手に取ってほしい。


作者の美術作家・さめしまことえさん。静岡県出身で、現在は鹿児島市川上町在住。 3才になる双子の子どもたちも、燦燦舎の重要なスタッフ。「いつでも君たちのふるさとはあるんだよ、そう子どもたちにも伝えたかった」


『桜島! まるごと絵本』(1512円)は 物語と解説の2部構成で桜島の魅力や成り立ちをやさしく紹介。 ことえさんとNPO法人桜島ミュージアムの福島大輔理事長との共著。 ご主人の鮫島亮二さんが起業した出版社・燦燦舎(さんさんしゃ)の第一作となった。送料無料で全国発送するとのこと。
注文は☎099-248-7496もしくは燦燦舎HPの注文フォームから。http://san-san-sha.com 


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