神々のおいしい故郷。Vol.3

ニニギノミコトゆかりの地、薩摩川内市、
新田神社・可愛山陵を訪ねて。

薩摩川内市の市街地のほぼ中央。
こんもりと緑に覆われた小高い山が見える。
亀の形をしていることから神亀山と名づけられた
この山の山頂に、ニニギノミコトが祀られた
新田神社とそのお墓・可愛山陵があった。


小山の頂上に、すごい神社が現れた。

大きな「二の鳥居」をくぐると、
石造りの太鼓橋・新降来橋(しんこうらいばし)を渡れる。
趣のある素敵な橋だ。



珍しい神社


大きな鳥居の向こうに石階段が見える。

それは、大きな森に吸い込まれるように上っていて、

どこか神秘的な世界へ誘うようだ。

一段一段、登るごとに、厳かな空気が濃くなる気がする。


社殿まで322段。


ずんずんと登れる石段ではないが、

登りきったら目の前にすごい神社が現れた。

その美しい色彩や社殿の造りに目を奪われる。

ときおり不意に光がさす。

祈りの場にふさわしい静謐な空気が漂っている。

神亀山(高さ70メートル)の山頂にある
新田神社への登り口「二の鳥居」より。
JR川内駅から車で約5分。
新田神社は神亀山の山頂にあり、
ニニギノミコトをまつる神社。
正面の拝殿は400年前の建物がそのまま使われている。
天井に描かれた美しい装飾も当時のまま。
珍しい子抱き狛犬(安産狛犬)。
やさしそうに迎えてくれた。
石段の途中にそびえる御神木は樹齢800年の大樟(おおくす)。
幹も荘厳だ。
ここならではの絵馬、子抱き狛犬、
神亀山(しんきざん)、
他にも川内大綱引きの勝守、安産守が珍しい。 



「この神社は、薩摩国で最も社格の高い一の宮として、古くから信仰を集めてきました。古文書には平安時代には建てられていたとあります」。とお話されるのは、

新田神社の神職・砥綿茂全さん。

「薩摩川内市は、1300年前の平安時代、薩摩国の中心として栄えました。

朝廷の地方機関である国府、いわば県庁所在地のようなものだったようです。

神社、仏閣も多い土地柄です」。

砥綿さんの話はいよいよ

新田神社の主祭神・ニニギノミコトの神話の時代へとさかのぼる。


「高千穂に降臨したニニギノミコトは南下し海に出て、

南さつま市の笠沙の地に上陸。

そこで出会ったコノハナサクヤヒメと結ばれたあと

薩摩半島を北上、川内川をのぼって、

この地に住まわれました。 

ニニギノミコトは川内の地に立派な千台高殿を築いたことから

「川内」と言う地名になったということです。

「新田神社」の「新田」は、

ニニギノミコトが川内川から水を引いて

新しく田んぼを作ったことによるものだといわれています」。


神代の時代のドラマティックな物語。

南九州一の大河が流れる豊かな土地に、

農耕の神様が住まわれたというのは自然な成り行きのように思える。

「この地にてニニギノミコトが亡くなって造られたお墓が可愛山陵です。

皇室のご先祖様のお墓として重要な場所。

一つの山に、神社とお墓があるのは珍しいのですよ」と、

拝殿の右側奥に案内してくれた。

樹木が、さらに現実の世界とは思えないような雰囲気を漂わせる。

目の前にあるのは、あのニニギノミコトのお墓。

やはり、不思議な感覚を抱かないわけにはいかない。

神話の神様に挨拶をするかのような、

とても尊い時間に思えた。

ミナミノクニ/地元人が見つけた面白い鹿児島

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