おかえり南のウイスキー。Vol.5

五感のごちそう。

庭先から絶え間なく聞こえる水の音。
それが料理を一段とおいしいものにする。



目にもおいしい

ウイスキーの試飲をさせてもらった

二代目社長・本坊常吉が暮らした

旧邸宅・寶常(ほうじょう)の和室で、

昼食をいただいた。

落ち着いた居室に庭園の美しさが映えて、

何ともいえぬ風情だ。

テーブルの上には二段重ねの宝箱のような重箱。

黒塗りの蓋をそっと開けると、そこには……。

海、山、畑の彩りが輝いている。

「季節が散りばめられているようですね」。

宝石を見つめるようにうっとり。

ひと箸ひと箸、目で楽しみながら口に運ぶと、

それぞれがやさしく上品な味わい。

魚も肉も焚物も、しみじみと旨いなあと思う。

庭先から絶え間なく水の音が聞こえてくる。

それが料理を一段とおいしいものにした。






魅せられる庭

寶常の大きな魅力になっているのが庭園。

その眺めは、まるで美しい日本画のように、みごとだ。

苔むした石灯籠。木々の葉からこぼれ出す緑。

絶えず聞こえてくる湧き水の音。

それらが日頃の疲れや悩みを、すっかり預かってくれる。

こんな素朴な里村に、こんな素敵な空間があるなんて。

心が鎮まるのを感じて、しばらくそこにたたずんでいた。





人懐っこい土地

お腹と心がたっぷり満たされて寶常を出て、

大きく深呼吸してみた。

入り込んでくる空気が、

来た時よりもからだに馴染むような気がする。

見回せば、遠くには盆地を縁どる山々、

近くには暮らしが息づく古い町並み。

津貫という土地は人懐っこい笑顔のおばあちゃんのように、

いい年のとりかたをしているなあ、とつくづく思う。

もういちど、蒸溜所のシンボルタワーを見上げる。

さっきまでいた灰色の雲がどこかに行き、

うっすらと光が射した。

空が高く青く広がってきた。


本坊酒造・マルス津貫蒸溜所&寶常

所在地/〒899-3611鹿児島県南さつま市加世田津貫6594

営業時間/9:00〜16:00

休館日/年中無休(12/29〜1/3のみ休館)

TEL:0993-55-2121 

 FAX:0993-55-2110

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