かすたどんの謎 Vol.5

時代が変わっても

まあるい気持ちに
してくれる。

発想の原点

かすたどんの人気がまさに

蒸気のような動力となり、

大きくなってきた薩摩蒸氣屋というお菓子屋さん。

それをひっぱってきた山口さんは、

いまも菓子づくりの現場で汗を流す。

「日々、遊んでるんですよ。

苦虫をかみつぶしたような顔で甘いお菓子をつくってもねえ。ははは」と

屈託なく笑う山口さんは、

毎日のように田畑を眺め、

草を踏み、

土に触れ、

野山の花を愛でる。

そして、その日、肌で感じた思いをメモにとり、

お菓子や仕事の発想を得るのだという。

「朝霧や夕暮れに見とれたり、

旅に出たり、おいしいものを食べに行ったり。

それが大事なんです。

目に見えない思いや感覚を、

いかにものづくりに生かすかが菓子職人の仕事だから」。

なにげない自然の中におもしろさを見つける能力。

かすたどんの、あのふっくらまあるい、

太陽のようにも満月のようにもみえる色や形も、

山口さんが見つめる美しい自然のなかから生まれてきたのだろう。


「できる人が怠けるより、できない人が精一杯している姿がどれだけ美しいか。努力する人には、勝てないと思います」人づくりへの考えも、どこか温かい。山口さんの撮られた写真には、自然や季節の美しさが映し出されている。



「失敗」という利益

商の心得も味わいのある表現で語る。

「たとえばね〝出入り口〟というでしょ。

〝入り出口〟とはいわない。

お客さんに喜んでもらえることをとことん先に出す。

そうすれば入ってくるんです。

でも、みんな自分に〝入る〟のを先に考えたがるんだ」。

そして、失敗を恐れてばかりいる姿勢をいましめる。

「失敗したら損した損したっていうけれど、

失敗も自分の利益だと考えたらいい。

私なんか大失敗をたくさんしてきた。

でも、ぜーんぶ自分の利益だよ。

そのおかげで、いまがあるんだから」。

なんだか、心が開いてくるなあ。

人生では苦労なしには、豊かさはない、とも。

「かすたどんも苦労して苦労して育てた子どもです。

だから、かわいいですし、人からもかわいがられると思うんですよ」。

なるほど山口さんの親心も、

かすたどんにはみっちりと詰まっているのだ。


楽しいことたくさんよっといで。
40年前、お店を出すとき書いた言葉。
「書は好きですが、この言葉は書いて欲しいとリクエストが多いですね」。ほんとうに眺めるだけで和んでくる。

ミナミノクニ/地元人が見つけた面白い鹿児島

鹿児島で発行されている観光情報誌の編集スタッフがお届けする鹿児島のウェブマガジン。

0コメント

  • 1000 / 1000